CKDの
食事療法を学ぶ
栄養の基本 Vol.2
カリウムについて
今回はカリウムの説明をさせていただきます。
●なぜ「カリウム制限」が必要なの?
カリウムは神経や筋肉などの細胞の興奮・伝達・収縮にかかわる重要な栄養素の一つです。カリウムは腎臓から90%排泄されます。そのため、腎機能が低下すると、排泄されるはずのカリウムが体内にたまり、手足のしびれ、脱力感、食欲不振、不整脈などの症状があらわれ、場合によっては、心臓が停止する可能性があります。
●カリウムを減らすにはどうしたらよいの?
カリウムは野菜や果物に多く含まれ、水に溶ける性質があるため、野菜を切り、茹でることにより野菜に含まれるカリウムを多少減らすことができます。但し、カリウムだけでなく水溶性ビタミン、ミネラルも水に溶け出しますので、茹ですぎると、野菜から摂取する水溶性ビタミン、ミネラルが不足する可能性があります。茹ですぎには注意が必要です。また、野菜を茹でると、野菜のかさがかなり減り、やわらかく食べやすくなり、野菜を多く食べ過ぎてしまう可能性があります。野菜にもたんぱく質が含まれていますので、結局、多くのたんぱく質を摂ることになってしまいます。
また、たんぱく質を多く摂りすぎると、尿素窒素などの毒素(酸性物質)が体内にたまり、血液が酸性に傾きます。体内の仕組みで血液が酸性に傾くと、これを中和するために細胞内から血液にカリウムが漏れ出すという現象がおこり、血液中のカリウムが増えてしまいます。たんぱく質が多い食品はカリウムも多い傾向にありますので、たんぱく質を制限することにより、血液中のカリウムを減らすことができます。
●カリウムを多く含む食品は?
前述した通り、たんぱく質が多い食品はカリウムも多い傾向にありますので、たんぱく質制限をすると、同時にカリウムを制限することができます。しかし、下記にあげるような食品は、たんぱく質がそれほど多くなくても、カリウムを多く含みますので、飲食の量と回数に注意しましょう。
- 100%の野菜ジュースや果物ジュース
- コーヒー、濃い緑茶、青汁などの嗜好飲料
- バナナ、メロン、キウイ、ドライフルーツなどのカリウムを多く含む果物
慢性腎臓病のステージ(病期)によって、カリウム制限が必要になりますが、極端にさまざまな食品を制限したり、すべての野菜を茹でこぼすなどの処理はかえって必要栄養素量が不足する場合もあります。主治医に相談しながら、正しい「低たんぱく食事療法」を行っていくことが必要です。
参考:
「第三版 腎不全がわかる本」(出浦照國・日本評論社)、「臨床栄養 別冊 栄養指導・管理のためのスキルアップシリーズVol.4 CKDの最新食事療法のなぜに答える 実践編」(金澤良枝他・医歯薬出版株式会社)、「改訂版 腎臓病の食品早わかり」(女子栄養大学出版部)